HOME > シンポジウム > 第2回安全保障シンポジウム(2009)
開会の挨拶
塩川正十郎(ネットジャーナリスト協会筆頭理事、元財務大臣)
挨拶
浜田靖一 (防衛大臣)
基調講演
ウィリアム・S・コーエン(元米国国防長官)
佐藤茂樹議員(衆議院議員、公明党)
林芳正(参議院議員、自民党、前防衛大臣)
浅尾慶一郎(参議院議員、民主党)
パネルディスカッション1 「日本の国際安全保障活動」
モデレータ:田中明彦(東京大学教授)
レイモンド・グリーン(駐日米国大使館安全保障課長)
柳井俊二(元駐米大使)
ロビン・H・サコダ(元国防省日本部長)
ジェームス・M・ボドナー(元米国国防次官補)
林芳正(参議院議員、自民党、前防衛大臣)
パネルディスカッション2 「国際産業協力と輸出管理」
モデレータ:西山淳一(三菱重工顧問、東京大学政策ビジョン研究センターアドバイザー)
柳井俊二(元駐米大使)
ウィリアム・シュナイダー(国防科学委員長・元国務次官)
木内英一(NEC技術主幹)
ニコール・パイアセキ(ボーイング・ジャパン社長)
ジェラルド P・ローレス(レイセオン社統合防衛システム副社長)
パネルディスカッション1
「日本の国際安全保障活動」
モデレータ:田中明彦 (東京大学教授)
▲ オバマ政権が誕生して、非常に広い世界的視野のもとで、特に多国間の協調を重視しつつ、真剣な姿勢で安全保障政策にも取り組んでいるという条件が生まれつつある。その中で他方、4月の北朝鮮のロケットの実験にも見られるように、日本を取り囲む安全保障の環境というのは、良くなっているという風に言う訳にはいかない。北朝鮮が六カ国協議に復帰するという見通しもなかなか立たないという状況で、さらにアフガニスタン、隣国のパキスタンの情勢というのは、全く楽観を許さないということ、また、ソマリア沖の海賊活動もなかなかやまないということ。その中で、弾道ミサイルの脅威、核兵器の脅威からテロリストの脅威、あるいは破綻国家、そこにおける海賊問題、さらにインフルエンザなど、非常に広い意味の安全保障問題が生じているということ。
▲ それぞれの観点で現在の安全保障にとっての課題というようなものを、お話をいただきたい。
レイモンド・グリーン (駐日米国大使館安全保障課長)
▲ 日本・アメリカとの同盟関係において安全保障の政策、非常に重要な時期にきている。
▲ 現在の金融危機、気候変動など、そこから生まれてくる責任も大きいものがある。アメリカだけではすべての責任を果たすことはできない。日本の民間部門での協力、アフガニスタンでの安定、パキスタンでの安定にますます重要になっている。国際的なオペレーションでも新型インフルエンザへの対応、また自然災害への対応、さらには平和維持活動、著作権の海賊行為などというところに関しての日本が果たせる役割も大きいものがある。
柳井俊二 (元駐米大使)
▲ 海賊の問題は集団的自衛権とか国連の措置とかいうような次元の話ではなく、大昔から国際的な犯罪をどう取り締まるかということで、海法の世界でも、公海上ではどこの国の軍隊でもどこの国の海軍でも取り締まることができるということにないる。ただソマリアのように、沿岸国の領海において、沿岸国が取り締まらないという事態は未だかつて皆が考えたことがない、そこで現在は国際的に協力してこれを取り締まるということになっている。あくまでもこれは犯罪の取り締まりの問題。
ロビン・H・サコダ(元国防省日本部長)
▲ 日本は対外的な問題、国際問題、国際紛争を解決するに、武力は使わないという政策をずっととってきた。平和憲法を持つ国として、世界でも尊敬を集めるようになられた思う。しかしながら集団的自衛権を否定する、行使はできないんだというような解釈、これは40年前に作られたもの。それがずっと今でも続いているというのは、とてもおかしい。
ジェームス・M・ボドナー(元米国国防次官補)
▲ 日米安保の中でも最も不平等になっているのが、日本が集団的防衛権を行使するのに躊躇している、それができていないために一方的な関係になってしまっているところがあるということ。なので私達は、この関係を相互に協力的な安保条約にするためには、平等性と互恵性を考えていく必要があると思う。
林 芳正 (参議院議員、自民党、前防衛大臣)
▲ ボドナーさんもサコダさんも、従来こういう会議でお話ししていますと、大体集団的自衛権の話は、日本が国内の問題として独自に考えてもらうべきことですけれども、敢えてアメリカの意見を申し上げさせていただければという、決まりきった前置きが大体付いていた、段々最近はその前置きが省かれるようになってきたという印象を持っています。これはお二人だけではなく、いろんな方が、いろんなところに書いておられる中にも、最近は見られるようになってきました、私はこれは日米関係がさらに成熟をしたのかなあと、あまり決まりきったですね、前置きみたいなことを言わずに単刀直入にものを言っても、あまり大騒ぎにならないというようになってきたのではないかなと思っておりまして、それは言うまでもないことですが、お二人もそれは完全に承知の上でですね、国内問題だということでおっしゃっているということ大前提ですけれども、そういう決まりきったプロトコール的な前置きを置く必要がなくなってきたということが1つあると思います。
パネルディスカッション2
「国際産業協力と輸出管理」
モデレータ:西山淳一(三菱重工顧問、東京大学政策ビジョン研究センターアドバイザー)
▲ 企業としては、武器輸出三原則等による禁止の状態、一種の鎖国の状態になる訳ですが、この状態に安住しているところはないのだろうかということを、自問してみる必要があるんじゃないかという風に思っています。技術立国を目指す日本にとって本当にいいことなのだろうかということも含め、自問する必要があるのではないかと思っております。
▲ オバマ新政権誕生に関して、日本との安全保障にどのような影響があるかということでありますが、この新しい安全保障政策が明確になりつつある現在、日本はどのように対応すべきか、日本の防衛産業にどのような影響があるのかというのが、これからの大きな課題ではないかなとこのように思っております。
柳井俊二 (元駐米大使)
▲ 武器輸出三原則については、三木答弁も含めた拡大解釈から、元の佐藤三原則の初心に戻ることが大切である。武器製造について国際協力をすることのメリットは、技術水準をあげ経済効果も上がりなおかつ、日本の防衛予算が今後増えない横ばいになる現状をふまえて、出来るだけコストを低くしてなおかつ防衛力を維持するためには必要である。
加えて、いわゆる大量破壊兵器の拡散を抑えるための輸出管理はもっと厳密にやっていかなければならない。
ウィリアム・シュナイダー (国防科学委員長・元国務次官)
▲ 防衛市場は今ではもっと情報支配型の防衛部門というものに変化しており、日本経済はこの点非常に強く、防衛産業協力の最善の機会を与えてくれている。さらに、協力関係が立ち上がる制度的なベースにおいて、GSOMIAは日米の防衛産業協力を支援してくれる強力な枠組みであります。そして、新政権は非常に積極的な活発な防衛産業での協力、これを推し進めていく政策であります。
このような大幅な機会を日本の産業は十分に活用していただきたい。
木内英一 (NEC技術主幹)
▲ 安全保障問題に対し、現実を直視すれば日本の置かれている環境からも諸テーマに真剣に取り組まなければならず、多面的に、かつしたたかに取り組む姿勢が望ましい。
また、先端技術の開発における日本の役割は、それが兵器に転用されるということも視野に入れて、他の先進国と協力し新しい兵器のマネージメントに取り組む必要性がある。兵器嫌いという理由だけで難しい問題から逃げる姿勢では世界の尊敬は得られないと思う。
防衛産業協力もまた、好き嫌いの問題ではなく、現実のポリティクスとして、肯定的に取り組むべき課題だと思います。
ニコール・パイアセキ (ボーイング・ジャパン社長)
▲ 国際的なコラボレーションが進むことによって、リスクや投資をシェアしようとする動きが出てくるでしょう。航空宇宙分野においても、一社や一国で全ての負担を引き受けるということは将来的には不可能になるはずです。
こうした産業ベースということで考えると、国際共同開発や国際共同生産の緩和は、より効率性の高い産業の展開に繋がってくれるはずだと考えています。
ジェラルド P・ローレス (レイセオン社統合防衛システム副社長)
▲ 武器輸出で色々私たちが直面しているチャレンジというのは、日本サイドだけでなく、実際に責任ある武器管理を行う国なら同じような問題を持っており、コストも国益も違う所では、色々と違った解決策や要求が出てくるのです。
s ▲ 私達は責任ある共同プログラムのようなものを、例えば国益に適った形で機会を使って、共同生産や共同輸出へと繋げていくことに、国民の注意を集めることが必要です。責任ある武器輸出とは何なのかということは国民的な議論です。そうすることにより、日本の産業がグローバルな役割を果たせるようになります。